ページTOPへ

遺言

遺産は基本的に法定相続人に相続順位ごとに相続されますが、遺言書が存在すると変わってきます。遺言書を最重要に考えなければならないので、遺産の分配方法もまったく変わります。

遺言は満15歳以上であれば未成年者でも作成できます。法定代理人は必要なく、成年被後見人でも本心に復している時は医師の立会いがあれば遺言は可能です。遺言には2つの重要なメリットがあります。

自分の思い通りに財産を処分できる

相続人が取得する相続分は次の順序で決まります。

1.遺言

2.遺産分割協議

3.法定相続分

以上のように遺言をしていない場合は被相続人の意思は反映されません。遺言をすることにより初めて意思に沿った相続が行われることになるのです。

死後に紛争を残さない

遺言で遺産分割内容、子の認知、マイナス財産の処理方法を明確にすることで死後の紛争を防ぐことができます。また法定相続人以外の人に財産を与えることも可能です。

遺言書の種類

遺言書には「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」「危急時遺言」「隔絶地遺言」の5種類があります。

遺言書には証人が必要ですが立場的に証人になれない人もいます。未成年者、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者、直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人などです。言葉や耳の不自由な人については、意志を伝える通訳を介して遺言を作成することは可能です。また遺言執行者でも利害関係がなければ証人として立ち会うことが可能です。遺言書を書く場合に重要なのは、財産を特定できるように遺贈するものを明確に特定し、誰でも解るように記載することです。

自筆証書遺言

公証人には依頼せず、自分で手書きをして作成する遺言書です。自分一人で作成できるため、遺言書の内容も秘密にできますが、病弱中の作成で筆跡が乱れているなど、有効性に問題が生じることや隠匿や破棄の危険性も秘めています。

自筆証書遺言書には以下の要件があります。

1.全文を自分で書く

2.日付を自分で書く

3.氏名を自分で書く

4.押印をする

ワープロなどコンピューターによる作成は認められません。他人による代筆も認められませんが、手が震えてしまうので他人に添え手をしてもらって書いてもらうものは認められています。また年月日が特定できるように書く必要があり、最後には必ず署名または押印する必要があります。押印は実印、認印どちらでもよく拇印でも有効ですがなるべく実印にすることをお勧めします。完成した遺言書は人にあずけると改竄や破棄の可能性が常に付きまとうので、銀行の貸し金庫や遺言の執行者に保管を依頼するべきだと思います。

なお遺言書での加除訂正は遺産相続に大きな影響を及ぼすので作成は慎重に行いましょう。訂正する場合は、署名の下に押印した印鑑と同じものを使って押印します。なお死後に検認が必要になります。

秘密証書遺言

自分で公証役場に遺言書を持っていき、確かに遺言者本人が認める遺言書であると、公証人に証明してもらう遺言書です。遺言者が「遺言で認知をしたいが、他人に知られたくない」という考えの時は秘密証書遺言を作成するのが賢明です。秘密証書遺言は自筆証書遺言と違い、ワープロなどコンピューター作成でも構いません。(署名は必ず自筆)ただ公証役場で公証人に遺言書を証明してもらう時は、利害関係のない成人二人以上を証人として連れてこなければなりません。公証人が遺言者および証人と共に署名押印し秘密証書遺言が成立するためです。秘密は完全に保ちながらも、偽造の疑いをかけられないで、本人の遺言だと確定できるのが秘密証書遺言のメリットということです。

ただし保管は自分でする必要があり、死後に家庭裁判所で検認の手続きが必要になります。公証人は内容に関与しないために書き方に不備があれば無効になることもあります。注意点として財産を特定して書くことです。特に不動産、預貯金、株式などは財産が必ず特定できるようにきちんと明記します。秘密証書遺言は性質上トラブルが起こる可能性が高いので、遺言執行者を指定し「遺言執行者は、この遺言執行のために必要な一切の権限を有する。」と条項を入れておく事をお勧めします。

公正証書遺言

自分と証人二人以上で「遺言書の案文」「遺言者の印鑑証明書」「証人2名の住所、職業、氏名、生年月日の住民票」「遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本」「相続人以外の人に遺贈する場合、その人の住民票」「土地と建物の登記簿謄本」「固定資産評価証明書」「遺言執行者を指定する場合は、その人の住民票」その他公証人から指示されたものを持ち公証役場へ行き自分と証人全員が署名押印することで成立する遺言書です。

遺言書の中で、一番安全で確実な遺言なのがこの公正証書遺言です。遺言者の希望する内容を元裁判官や元検事、弁護士など、法務大臣から任命された公証人が遺言書として作成するので法的に無効になることはありません。また原本が公証人の手元に20年間保管されるので紛失や改竄、盗難などの心配がありません。

このように最も安全な手段である公正証書遺言ですが、手続きが非常に面倒で公証人への依頼費用もかかるということに問題があり、そして遺言の存在と内容を立ち会った証人たちに知られてしまうという欠点もあります。

目的の価額手数料
100万円以下5000円
200万円以下7000円
500万円以下11000円
1000万円以下17000円
3000万円以下23000円
5000万円以下29000円
1億円以下43000円
3億円以下43000円+5000万円ごとに13000円加算
10億円以下95000円+5000万円ごとに11000円加算
10億円を超える249000円+5000万円ごとに8000円加算

危急時遺言

自分に死期が迫り署名押印できない遺言者が口頭で遺言し、証人がそれを書面化する遺言書です。病気などで死に直面した人に認められる一般危急時遺言と、船舶の遭難である場合に認められる船舶遭難者遺言が法律で定められています。

証人が2人以上(一般危急時の場合は書面化する証人を除く)必要で、筆記した内容を遺言者および承認してもらう必要があります。また遺言の日から20日以内に、家庭裁判所に遺言の確認を得なければ遺言の効力はありません。遺言者が死亡してしまった場合は、遺言書の検認申し立ても必要となります。

隔絶地遺言

自分が一般社会との交通が断たれた場所にいるため、普通方式による遺言ができない場合に認められる方式です。伝染病隔離者遺言と在船者遺言が法律で定められています。

伝染病隔離者遺言の場合は警察官1人と証人、在船者遺言の場合は船長もしくは船の事務員と証人が立ち会い、自分が作成した遺言書に署名・押印してもらう必要があります。どちらの場合も家庭裁判所の確認は不要です。

遺言書に書けること

基本的に、遺言には何を書いても良いとされていますが、法律的に効力のあるものは決まっており、以下のものがあげられます。

相続人の廃除、廃除の取り消し

子どもの認知
婚姻関係以外によって生まれた子を自分の子であると認める

財産の遺贈

財団法人設立への寄付

信託の設定

遺言執行者の指定・委託

遺言を実行してもらう人を指定、またはその指定を第三者に委託

遺贈についての遺留分減殺方法の指定
相続人が遺留分を主張したとき、どの財産から減殺するかを指定

遺産分割の方法の指定・指定の委託

遺産分割の禁止
遺産分割を禁止することができます(5年間)

相続人の担保責任の指定

相続分の指定・指定の委託
法定相続分と異なる相続分の指定

後見人・後見監督人の指定
未成年者に対し最後に親権を行使する者は、遺言で後見人を指定