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相続税計算・申告

相続遺産を評価し、相続人との分割協議が終われば、次は相続税の課税価格を算出しなければなりません。ここで、相続税の課税価格の算出をどのように行えばよいのかを確認します。相続税の計算は、相続をした相続人や遺言によって財産を得た受遺者の全員について、それぞれ別々に行わなければなりません。

まず課税対象となる価格の計算をしなければなりません。初めて経験する人にとっては難しいものですが、お金の問題なので専門家に任せずに行うようにしてください。

課税価額の算出

課税価格とは相続税がかかる金額のことです。取得する財産を足していき、そこから非課税財産分、債務分を引いていきます。

相続または遺贈により取得した財産の価額

国税庁が定めた評価方法により、時価ではなく相続税評価額を算出します。

みなし相続財産

みなし相続財産としては以下のものがあります。

1.受取人が受け取る保険金額から500万円×法定相続人数の非課税額を控除した額

2.在職中に亡くなった場合、受取金額に500万円×法定相続人数の非課税額を引いた額

3.生命保険会社や郵便局などの個人年金で、年金や一時金が遺族に支払われる額

4.被相続人に尽くした特別縁故者へ認められる財産分与

5.遺言による信託受益権や定額譲り受け、債務免除や肩代わりを受けた額

3年以内の生前贈与

相続人が被相続人から死亡3年以内に贈与された財産になります。

債務・葬式費用

借金やローンなど被相続人が残したマイナス分の財産と葬式にかかる費用の葬儀料、戒名料、通夜費用などの諸経費。

非課税財産

墓石、仏壇、香典、花輪代、弔慰金、公益事業財産などの非課税財産。

以上の項目を以下の式で計算します。

課税価額=相続財産価額+みなし相続財産額+生前贈与額-債務・葬式費用

相続税の算出

課税価額の合計額を計算したあと、基礎控除額を引き、課税遺産の総額を計算します。そして財産を法定相続分どおりに分割して相続したと仮定し相続税の総額を計算します。

課税価格の合計

先ほど計算した課税対象額の各人の価格を全て合計します。

基礎控除額

3000万円+600万円に法定相続人をかけた金額です。

各取得金額

遺産を法定相続分どおりに分割したと仮定し、それぞれの法定相続人の取得金額を計算します。

算出税額

法定相続分に応ずる各取得金額に税率をかけて法定相続人ごとの税額を求めます。ここでの計算は、法定相続分に応じる各人の取得金額×速算税率-速算控除額となります。

速算税率は以下の通りです。

相続税の速算表

各法定相続人の取得金額税率控除額
~1,000万円以下10%
1,000万円超~3,000万円以下15%50万円
3,000万円超~5,000万円以下20%200万円
5,000万円超~1億円以下30%700万円
1億円超~2億円以下40%1,700万円
2億円超~3億円以下45%2,700万円
3億円超~6億円以下50%4,200万円
6億円超~55%7,200万円
「各法定相続人の取得金額」とは、相続財産の課税価格合計額から、基礎控除およびその他の控除額を差し引いた課税遺産総額を、それぞれの法定相続分で按分した金額です。

控除できるもの

相続税の計算をするには遺産の総額を確定しなければいけませんが、この際にいろいろな控除があります。以下に挙げる控除はその都度改正される可能性がありますが、ここでは現行の制度をもとに説明します。

配偶者控除妻や夫が相続する場合、法定相続分相当額と1億6000万円のいずれか大きい額までは相続税は免除されます。1億6000万円を超えている場合は、軽減額を配偶者の税額から差し引きます。
その計算方法とは、「相続税の総額」×「配偶者が法定相続分を取得した場合の金額(もしくは配偶者が実際に取得した課税価格)÷相続税の課税価格の総額」となります。
贈与税控除相続開始前3年以内の分の納付済みの贈与税額を相続税額から差し引いて、税額を調整します。算出方法は、「贈与を受けた年分の贈与税額」×「相続税の課税価格に加算された贈与財産の価額÷贈与を受けた年分の贈与財産の合計額」となります。
未成年者控除法定相続人が未成年の場合、10万円に20歳になるまでの年数を掛けた額が税額から控除されます。例えば、子供が10歳であれば、20歳-10歳=10歳なので10×6万円で60万円が税額から控除されます。控除額がその未成年者の相続税額を越えてしまうときには、超過分を親や兄弟姉妹など、未成年者の扶養義務者である人の相続税額から差し引くことができます。
障害者控除相続人が障害者である場合、85歳に達するまでの1年につき10万円(特別障害者は20万円)の金額が税金から控除されます。障害者控除の場合も、控除額がその障害者の相続税額を越えてしまうときには、超過分は扶養義務者であるほかの相続人の相続税額から差し引くことができます。
相次相続控除短期間のうちに相次いで相続が続くと、相続税を支払う人にとって負担になるので、相続税額から一定金額を差し引くことができます。10年以内に2回以上相続があった場合、最初の相続税の一部を2回目の相続の相続税から控除できます。※但し要件を満たしていることが必要です。
外国税額控除相続税は海外にある財産に関しても課税されますが、その取得した財産に関して、日本の相続税にあたる税金を外国で課税されていた場合、日本と外国で二重に課税されてしまうことになります。その際に、一定額を外国税額控除として差し引くことができます。

申告に必要な書類

相続税の算出が終わりましたら申告を行います。申告および納期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。申告書の提出先は、被相続人の住所地にある税務署で、相続税は一括して納付するのが原則となっています。もし、期限内に納めることができなかった場合には、延滞税を払わなければなりません。

延滞税は納期限から2ヶ月以内なら「年7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合となっています。なお納期限から2ヶ月を超えてしまった場合には年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となっています。

必要書類

相続税の申告には多くの書類を添付しなければなりません。いろいろ複雑ですが、申告期限には全て揃えなければならないので注意してください。以下の表が相続税申告に必要とされる主な添付書類です。

身分関係、権利関係の書類

1.被相続人の戸籍(除籍、原戸籍)謄本

2.被相続人の経歴書(出生地、学歴、職歴等)

3.相続人全員の戸籍謄本

4.申述の証明書(相続放棄した者がいるか、限定承認の場合)

5.相続人関係図

6.相続人全員の印鑑証明書

7.遺言書の写し(遺言書が存在する場合)

8.遺言書の検認証明書(遺言書が存在する場合)

9.遺産分割協議書の写し(遺産分割協議が成立している場合)

10.特別代理人の選任申立書(相続人に未成年者がいる場合)

11.住民票(特定居住用宅地等の特例を適用する場合、相続開始の日以後に作成された引続き居住する者の住民票が必要)

財産、債務を明確にする書類

1.土地、建物の登記簿謄本

2.固定資産税評価証明書(土地について路線価地域の場合は不要)

3.預貯金の残高証明書(可能であれば解約計算書)

4.生命保険金の支払通知書の写し

5.退職手当金の支払通知書の写し

6.借入金の残高証明書

7.入院費用、租税公課等の未払金残高明細書

8.葬式費用の明細書

評価明細書(税務署に所定の用紙があります)

1.宅地及び宅地の上に存する権利の評価明細書

2.市街地農地等(市街地周辺農地、山林、原野)の評価明細書

3.上場株式の評価明細書

4.登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書

5.国税局長の指定する株式の評価明細書

6.取引相場のない株式の評価明細書

7.山林、立木の評価明細書

8.一般動産及び船舶の評価明細書

9.書画骨とう品の評価明細書

10.特許権、実用新案権、意匠権、商標権等の評価明細書

11.営業権の評価明細書

12.定期金に関する権利の評価明細書

13.信託受益権の評価明細書