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葬儀とは

日本では長い間、「野辺送り」というかたちで、死者と弔ってきました。僧侶のお経を読んでもらった後、村中の人が列を成して、村はずれの墓地まで棺を運び、土葬するというお弔いです。戦後までは全国各地でこの野辺おくりを見る事ができたものです。戦後、火葬が普及し始めると、墓地まで棺を運ぶ必要が無くなり、自宅で全ての儀式を行うようになります。この頃、お葬式は隣組の人たちの協力無しに行うことはできない儀式でしたが高度成長経済成長の時代になると、次第に近所付き合いが希薄になり、全て隣組に仕切ってもらう事が難しくなります。こうした中で、葬儀社に依頼する人が増え、専門家がお葬式を取り仕切るようになりましたが、住宅の小規模化が進み、日本家屋が減る中で自宅でのお葬式も難しくなり、会館でお葬式を行うようになりました。このようにお葬式の形は変化してきましたが、お葬式の意味は今も昔も変わりません。お葬式には4つの大切な意味があります。一見、非合理なものと見られがちなお葬式ですが、その中には先人の知恵が詰まっているのです。

4つの意味

お葬式とは、葬儀会場に人を集めて行う儀式のことを言いますが、臨終の看取りから枕教、納棺、通夜、葬儀、火葬、納骨までのプロセス全体をお葬式とも言います。そしてこのお葬式には、次のような4つの意味があります。

『宗教的な意味』 ⇒ 祈り

『社会的な意味』 ⇒ 別れ

『精神的な意味』 ⇒ 哀しみを癒す

『物理的な意味』 ⇒ 遺体を処理する

この4つのうち、どれが欠けてもお葬式は成り立ちません。この4つを中心に、何故お葬式を行うのかについてお話します。

宗教的儀式としてのお葬式・・・祈り

当たり前の事ですが、お葬式は故人の為に行われます。洋の東西を問わず人類は、人が亡くなったら身体から魂や霊が離れると考えてきました。そして遺された人たちは、その魂や霊が迷わないように、あの世でも幸せでいられるよう祈ったのです。仏式では供養と言いますし、神道では鎮魂と言います。またキリスト教では、人はみな死んだら神の元に帰るとされ、祈りは祝福というかたちをとります。お葬式で最も大切なのは、この祈りなのです。祈りによって故人は癒され、遺された者達も癒されていくのです。

社会的儀式としてのお葬式・・・家族、そしてお付き合いのあった方々

お葬式は、故人と遺された人との別れの儀式とも言えるでしょう。遺された人というのは、家族であり、お付き合いのあった友人知人です。人が社会的な存在であり、人との関わりの中で生きてきたからこそ、お葬式は行われます。お葬式はこうした人たちとのお別れの場、つまり、故人と関わり合いのあった、全ての人にとっての儀式でもあるのです。

精神的な意味・・・哀しみを癒す儀式

お葬式の流れには、いろいろなプロセスがあります。遺族は、そのプロセスの中で何度も、故人の死と向き合う事になります。この故人と向き合う時間は、とても悲しい時間ですが、同時に哀しみを癒す時間でもあるのです。故人の死と向き合う事によって、少しずつですが、人は大切な家族が亡くなったことを受け入れていき、その家族のいない生活を始める準備をしていきます。最近は、お葬式を行わない人が稀にいますが、その中には、後になってなかなか哀しみから抜け出せず、精神的に不安定になる人もいるようです。お葬式という儀式は、単に宗教的なだけではなく、合理性もあわせもっていることを忘れてはなりません。

物理的な意味・・・遺体の処理

遺体の処理という言い方をすると、何か亡くなった人を軽んじているかのように聞こえますが、人が亡くなったら遺体をそのままにしておくわけにはいきません。人の身体は死の瞬間から、少しずつ痛んできます。現代では、棺の中にドライアイスを入れることが多いですが、これも遺体を冷やして痛まないようにする工夫です。しかしどんなに処置をしても、生前の姿のままを保つことはできません。つまり火葬は、遺体が傷んでいく姿を遺族が見ないですむように、また病原菌が繁殖して、遺された人に感染しないようにする為でもあります。お葬式には、遺体の処理という役割もあるのです。

誰のために

お葬式で故人とお別れをするのは、家族であり、友人知人であるわけですが、この両方が大切であるのは言うまでもありません。ただ最近は、とかく家族とのお別れだけが大切にされる傾向があります。家族とのお別れの時間を大切にするのは、それはそれでいいのですが、一方で故人といろいろな関わりのあった方々にとっては、淋しいお葬式になってしまいます。また、参列者を呼ばない場合、亡くなったことを後から知った友人知人が手を合わせる為、毎週末のように自宅に訪れる事になり、かえって面倒な事になってしまう事もしばしばです。人は家族との関わりだけで生きているのではなく、たくさんの人との関わりの中で生きています。ですから、お葬式においても、そうした方々との関わりを無視する事はできません。参列者をあまり呼ばないお葬式も、いいところは多いのですが、メリット・デメリットを理解した上で選択していく事が大切です。